『SHOGUN 将軍』を観た──時代劇の限界を超えた、圧巻の映像体験

どうも、ニコラスです。ディズニー+で配信されているドラマ『SHOGUN 将軍』を観た。
率直に言って、これほどまでに”文化”と”空気”を本気で再現した海外ドラマには、なかなか出会えない。
みんな口をそろえて言うが、これだけの為にディズニー+に登録してもいいレベル。

僕自身、映像制作を仕事にしている身として、どうしても映像の質や演出のディテールには目が行ってしまう。
その視点から見ても、この作品は時代劇という枠を超えた、異次元の完成度だった。


「異文化」ではなく「異世界」としての日本描写

ジョン・ブラックソーン(演:コズモ・ジャーヴィス)が日本に漂着する序盤、まず圧倒されたのは、
異文化交流を描く通常の枠組みではなく、
**”まるで異世界に迷い込んだかのような感覚”**を徹底的に演出していたことだった。

日本人同士ですら一筋縄ではいかない複雑な権力構造や、武士階級独自の倫理観。
そこに無防備に放り込まれる主人公の視点を通して、
文化の断絶をあえて翻訳せず、体験させる──そんな覚悟を感じた。

参考までに、米メディアThe New Yorkerも『SHOGUN』について、

「異文化理解ではなく、異文化の中で迷子になる感覚を描いた」
と評している。

この方向性を選んだこと自体が、まず非常に意欲的だった。


俳優陣の説得力──特に真田広之とアンナ・サワイ

真田広之さん演じる吉井虎永(=徳川家康をモデルとしたキャラクター)は、登場するだけで場の空気が変わる。
「沈黙すら演技の一部になる」、そんな存在感を持った俳優は、世界的にも極めて稀だ。

また、戸田鞠子役のアンナ・サワイさん。
英語と日本語、両方を自在に操るバイリンガルの役どころで、
彼女がいなければこの物語は成立しなかったと言ってもいい。
通訳以上の役割──つまり、異文化の”痛み”を引き受ける象徴としての存在感を放っていた。


映像設計が「映画」クオリティ

特筆すべきは、撮影とライティングのレベルだ。
極端なローキー(暗部を大胆に活かした)照明設計、自然光を徹底的に意識した撮影。
どのシーンも「情報」を見せるのではなく、
「空気の質感」そのものを画面に写し取ろうとしている。

夜の蝋燭の光、朝靄の立ちこめる庭園、戦場の湿った土の匂いまで感じ取れそうなディテール。
ここまで質感にこだわったテレビドラマには、正直ほとんど出会ったことがない。

ちなみにVariety誌のインタビューによれば、撮影監督のチャド・コーエンは、

「最新のデジタル機材を使いつつ、あえてアナログ的な制約を課すことで”フィルムの質感”を追求した」
と語っている。
これも非常に納得できるアプローチだった。


正直、いま日本でこのレベルの時代劇は作れない

これはとても悔しいことだけど、正直な感想だ。
日本の映像業界は、制作費・制作スケジュール、そして何よりも「作り方そのもの」がまだ旧態依然としている。
その中で『SHOGUN』が提示したのは、
「時代劇」というジャンルを、真にグローバルレベルの叙事詩へと昇華できる可能性だった。

「型」ではなく「生」を撮ること。
「説明」ではなく「体験」を観客に渡すこと。
それが、この作品が世界中で絶賛されている最大の理由だと思う。


まとめ──『SHOGUN』は、時代劇の未来への挑戦状だった

『SHOGUN 将軍』は、単なる歴史ドラマでも、異文化交流ドラマでもない。
これは、文化と文化の「不可解さ」そのものを、映像体験として提示する試みだった。

そして何より──
「歴史劇」すら、ここまで深化させることができるのだ
ということを、世界中に示してしまった作品だ。

もしまだ観ていないなら、ぜひ。
できれば大きな画面で、そして、できるだけ集中して。
そうすればきっと、”日本”という舞台を借りた”異世界体験”に、深く没入できるはずだ。

参考資料

ニコラス・タケヤマ

ニコラス・タケヤマ

日英対応の撮影監督・映像ディレクター。上智大学卒。 ワンマンでのビデオグラファースタイルの案件から数十人規模のスタジオセットでの撮影・照明のディレクションにも対応。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


TOP