みなさんこんにちは、ニコラスです。
今回は僕が最近試してみて「お、これ面白いな」と思ったワークフローについて語っていきます。テーマは Sony FX3の映像をCatalystでMXFに変換し、DaVinci ResolveでCamera RAW的にグレーディングする方法。

これ、なぜ必要なの?って疑問を持つ人もいると思います。
実はFX3は公式にはCinema Lineのカメラ(FX6やFX9)のようなX-OCN RAW記録ができません。でも、撮影したS-Log3やHLG素材をなるべく「生データっぽく」扱いたい!という欲が出るのが、カラリストやディレクターの性なんですよね。
そもそもCatalystって何?
Catalyst Browse / Catalyst PrepareはSony純正のソフトで、主に以下の機能を持っています。

✅ 撮影した素材の確認・ログ変換
✅ ジャイロデータを活用したブレ補正
✅ メタデータ付きMXF(.mxf)形式への書き出し
特に注目すべきは最後の部分。通常FX3が記録するのはXAVC SやXAVC HS(.mp4)のコンテナですが、CatalystでMXF化することで、メタデータ(LUT、カメラ設定、ブレ補正情報など)をしっかり保持した「業務用っぽい」素材に変換できるんです。
参考:Sony Catalyst公式
DaVinci Resolveでの「RAW的」編集とは?
ここで言う「RAW的」というのは厳密な意味でのRAW(センサー情報そのままの生データ)ではなく、以下のような編集の自由度を指します。
- カラースペース変換(S-Gamut3.Cine → Rec.709など)
- カメラ側で焼き込まれたLUTのオフ・オン
- ISOやホワイトバランスの後処理(正確にはRAWではないが近い調整感覚)
通常、.mp4素材をResolveに読み込んだ場合、カメラメタデータは最低限しか渡りません。でも、Catalyst経由でMXF化した素材なら、Resolveのカラーマネージメント設定(DaVinci Wide Gamut、RRTなど)を活用し、元のログ情報を生かしたままグレーディングができます。
参考:Blackmagic公式DaVinciカラーマネージメント
実際のワークフロー
では具体的な流れをまとめます。
1️⃣ 撮影:FX3でS-Log3設定
まずFX3側でS-Log3/S-Gamut3.Cineを選択し、10bit 4:2:2記録に設定。
これが後工程で最大限の編集自由度を確保する鍵です。
2️⃣ Catalystで読み込み・エクスポート
Catalyst Browseで素材を開き、メタデータ(LUTや手ブレ情報)を確認します。必要ならブレ補正をONにして、XAVC Intra(MXF)形式で書き出します。
※ポイント:Catalyst Prepare(有料版)を使うと一括処理が便利。
3️⃣ Resolveでインポート
DaVinci ResolveでMXF素材を読み込みます。
このとき、プロジェクト設定のカラーマネージメントを以下のように調整。
- カラーマネージメント:DaVinci YRGB Color Managed
- Input Color Space:Sony S-Gamut3.Cine / S-Log3
- Timeline Color Space:DaVinci Wide Gamut
- Output Color Space:Rec.709(必要に応じて変更)
これで、Resolve側がカメラ情報を正しく認識し、LUTの焼き込みをせずに「カメラRAW的」に触れる状態になります。
注意点・限界
ここは僕の意見をはっきり書きますが、正直言って 完全なRAWではない です。
DaVinci ResolveでISOやホワイトバランスをRAWパネルから操作できるのは、BRAW(Blackmagic RAW)やARRIRAW、RED RAWの専売特許。
Catalyst経由のMXF素材ではそこまでの自由度は得られません。
ただ、S-Log3の広いダイナミックレンジと10bitの階調を正しく扱えることで、後工程で破綻しにくい、リッチなカラーグレーディングが可能になるのは事実です。
僕の結論:使う価値アリか?
結論、CatalystでのMXF化は 業務用途やクライアントワークでの信頼性を高めるためにはアリ です。
特に、Resolveでカラーマネージメントをちゃんと組んでる人、LUT焼き込み前提ではなくシーンリニア処理をしたい人にはかなり有効。
ただし、純粋なRAWのような「後から何でも変更可能な世界」を期待すると失望するかも。
僕的には、BRAWやProRes RAWへの羨望を抱きつつ、FX3の現状を最大限生かす現実的な策としてCatalyst経由はオススメできます。
参考・引用資料
- Sony Catalyst Browse / Prepare 公式サイト
https://www.sonycreativesoftware.com/catalyst - Blackmagic DaVinci Resolve Reference Manual
https://documents.blackmagicdesign.com/UserManuals/DaVinci_Resolve_18_Reference_Manual.pdf - FX3公式製品ページ(スペック・記録方式)
https://www.sony.jp/ichigan/products/ILME-FX3/
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