【アドラー心理学×映像制作】「劣等感」が武器になる。フリーランス映像制作者のキャリア形成論

はじめに

こんにちは、映像ディレクターのニコラス・タケヤマです。

映像の世界って、めちゃくちゃ競争が激しいじゃないですか。ポートフォリオの見栄え、クライアントの反応、他のクリエイターとの比較…気づいたら自分の仕事に自信を持てなくなったり、「自分には才能がないんじゃないか」っていう負のスパイラルに陥る。

でも、最近僕が武器にしているのは“心理学”です。特に「アドラー心理学(個人心理学)」の考え方は、フリーランスの映像クリエイターにとってめちゃくちゃ使えるんです。

本記事では、アドラー心理学のエッセンスを噛み砕きながら、僕自身の経験や、現場での気づきを交えて、「どうやって心の不安を味方にしていくか」について語っていきたいと思います。この記事を読み終わった頃には、ちょっとだけ前向きに、自分の仕事に向き合えるようになっていたら嬉しいです。


1. 劣等感は「成長の原動力」

アドラー心理学では「劣等感」は悪いものじゃない。むしろ「人は劣等感があるからこそ努力するし、成長できる」って考え方をする。

これは僕自身、本当に痛感していることです。SNSで流れてくる同年代の監督たちの投稿を見て、「あの人はもうNetflixの案件やってるのか…」と心がざわつく日もあります。でもそのザワザワの正体って、“羨望”や“嫉妬”じゃなくて、自分がまだ本気で叶えたい夢に向き合えている証拠なんですよね。

だから僕は、劣等感を「なりたい自分の方向を教えてくれるコンパス」だと思うようにしています。落ち込むんじゃなくて、それを指針にしてやるべきことを明確にしていく。それがフリーランスという不安定な立場でも、前に進む力になっています。


2. 過去じゃなく、「これから」を見る目的論

アドラー心理学の根本には「目的論」という考え方があります。人は“過去のトラウマ”や“家庭環境”に支配される存在ではなく、「こうありたい」という目的を持って、今の自分を選択しているという立場です。心理学の主流であるフロイトが説いている過去のトラウマから今の自分があるという「原因論」とは真逆の説き方です。

例えば、映像業界でよくあるのが「美大や映画学校を出ていないから仕事が来ない」という思考。でも、それって自分で自分にブレーキをかけてるだけかもしれない。

僕自身、映像の専門教育は受けていません。でも、自主制作の現場で学びながら、映像ディレクターとして、そしてカラリストとして、ここまでやってきました。大事なのは「出自」よりも「目的」です。

たとえば「僕は映像で誰かの心を動かしたい」という目的があるとします。その目的に照らし合わせて、「じゃあ次はどう動く?」と考えられるようになると、キャリア形成が格段にシンプルになります。


3. 共同体感覚=映像制作における“チーム力”の核

アドラー心理学において「幸福感」は、「自分が所属する共同体の中で、役に立っている」と感じられたときに生まれると言われています。

この考えは、映像制作の現場にめちゃくちゃフィットします。

ディレクター、撮影、照明、美術、録音、編集…映像制作はとにかく多くの人が関わっていて、それぞれがプロとしての責任を持っています。

その中で、「今、自分がチームにどう貢献できているか」を意識できるかどうかが、現場の空気を大きく左右します。

たとえ自分の担当が照明の一灯だけでも、「この光で、役者の目に命が宿った」と思えたら、そのプロジェクトへの関わり方が変わってきます。

僕は撮影やカラーグレーディングのとき、「この一手が全体のテンションを変える」と思いながら作業するようにしていて、それが結果的に良い現場づくりにつながっていると思っています。


4. クライアントワークにおける「勇気づけ」の重要性

アドラー心理学では、「褒める」よりも「勇気づける」ことが大切だとされています。

「褒める」は上から目線になりがちだけど、「勇気づける」は対等な立場での承認なんですね。

これ、クライアントワークにめちゃくちゃ活かせます。映像制作の現場では、修正依頼やトラブルもつきもの。でも、そこを“攻撃”と捉えるか“成長のヒント”と捉えるかで、全然違う対応ができます。

「この提案、先方には刺さらなかったけど、自分なりにどこがズレていたのかを見直そう」みたいな捉え方ができると、次の提案力がぐっと上がる。

逆に、自分から周囲を勇気づける姿勢も重要です。

「今日の演出、めっちゃ良かったですね」 「このテイク、編集で絶対活きますよ」

そんなちょっとした一言が、現場の士気を高めてくれる。フリーランスは組織に属していないからこそ、「空気を作る人」になることが、次の仕事につながるんです。


5. 自分の「目的」を明確にすることがキャリアの軸になる

キャリアに迷うとき、僕が必ず立ち返るのが「目的」です。

「なんで映像をやってるのか?」 「どんな人に、どんな映像を届けたいのか?」

この“問い”に対して、しっかり言葉を持っていると、選択肢に迷わなくなります。

僕の場合は、「映像を通じて、見えない感情を“見える形”にしたい」というのが目的。そのために脚本を書くし、撮影もするし、カラーも自分でやる。

目的があれば、仮に案件が減ったとしても、「今は内面を磨く時期だ」とポジティブに考えられるし、新しい技術やジャンルにもチャレンジしやすくなります。


おわりに:アドラー心理学は、映像制作者にこそフィットする

アドラー心理学は、精神的な理論だけじゃなく、実践の哲学でもある。
“自分の可能性を信じて、他者とつながりながら、一歩ずつ前に進む”。
これは、まさにフリーランス映像制作者の生き方そのものじゃないかと僕は思ってます。

映像の世界に飛び込んだ時、僕は自信なんてまったくなかった。でも、アドラーの考え方に触れたことで、「今この瞬間からでも変われる」と思えるようになった。

劣等感を受け入れて、目的を見つけて、仲間とつながりながら、一歩ずつ前に進んでいく。

それって、クリエイターとしても、人としても、すごく健全で持続可能な生き方じゃないかと思うんです。

ニコラス・タケヤマ

ニコラス・タケヤマ

日英対応の撮影監督・映像ディレクター。上智大学卒。 ワンマンでのビデオグラファースタイルの案件から数十人規模のスタジオセットでの撮影・照明のディレクションにも対応。

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